【こんな症例も治りますシリーズ 496】 貧血の原因が腎臓病だけではなかったネコちゃん も適切な診断と治療で治します
上の写真は、ネコちゃんの下痢便です。
★ よく見ると、通常のウンチよりも黒色ですね。
★ このような下痢をメレナと言います。
★ 当院は、POMR式診断方法を用いています。 一つの異常だけに注目しないで、誤診が防げる診断方法ですので、今回のような複数の原因の病気も診断できるのだと思います。
参照サイト:
https://bit.ly/3OIDo4w
猫 18歳 オス(去勢手術済)です。
【 腎臓病のセカンドオピニオン 】とのことで来院されたネコちゃんです。
◆◆ 『 約3年前に腎臓の数値が上昇し始めていたのですが、昨年夏ごろ体調が悪くなり治療を開始した 』とのことでした。
■ 最近は貧血が進み、『 腎不全 』と診断され、造血因子の注射も試みましたが改善されなかったようです。
■ 『 これ以上の治療法はない 』と前医に言われて、当院に来院された患者様です。
■ 血液検査では赤血球の減少、白血球の上昇、尿素窒素(BUN)、 クレアチニン値の上昇が見られました。
■ 腹部エコーでは腎臓の明らかな構造異常が見られました。 また腸間膜のリンパ節の腫大、回盲部結腸の肥厚も見つかりました。
■ 飼い主様にお話を伺うと、黒色の下痢便が出始めた頃と貧血が悪化してきた時期が重なるようでした。
■ 消化管の胃や小腸の中に出血があると、便が黒くなることがあります。
■ とにかく重度の貧血に対しては輸血が必要ですので、血液型を調べ、当院の供血猫さんとクロスマッチテスト(交差反応と言って、輸血する事による副作用が起こらないか調べる検査)を行い、輸血を実施しました。
■ 輸血後は元気になって、ご飯も良く食べ出したそうです。
■ この猫ちゃんの貧血の原因は、腎疾患だけではなく消化管出血に由来することも考えられます。
■ 今後は、腫大したリンパ節や肥大した消化管壁を生検(組織の一部を採材して病理組織検査をする事)することで、原因がはっきりするでしょう。
■ 腎臓病は血液検査、尿検査などによって発見されることが多いですが、レントゲンやエコー検査などの画像診断も定期的に行なうことによって、他の疾患も早期に見つけてあげることができます。
■ 当院では、高齢動物さんには特に健康診断に画像診断(レントゲン検査、超音波エコー検査、CT検査など)をおすすめしています。
■ 血液検査だけでは見逃してしまう病気もありますので、ご注意ください。
獣医師 新井澄枝
< 前の記事へ 次の記事へ >